暗号通貨【トレンド速報】

暗号通貨(仮想通貨)の最新情報をイチ早くお届けします♪ 【注】ここでは億り人に近づけるかも知れない情報を発信していきますが、何らかのトラブルに見舞われても当方では一切責任を負いませんのでご利用の際は自己責任でお願いします。

Decentralized Kingdom 第1章 6 /著:小鈴危一 /仮想通貨SF小説

   

Pocket

Decentralized Kingdom 第1章 6 /著:小鈴危一 /仮想通貨SF小説

 最後の動きモーションを終え、認証画面が変わって——新たに、四桁の入力フィールドが表示された。
「はーあぶなぁー。最後にコード設定しておいてよかったぁ」
 少女が胸をなで下ろして言う。

「まああたしの顔紋でも大丈夫なんだけどね。でもお兄さん、あたしの……」
「四か五か六」
「……え?」

「最初の数字だよ。お前はセキュリティ意識がある。泡状ディスプレイで統計的に最初に選ばれやすい一二三,七八九〇は避ける気がする。四、五、六……五、六、六……六だな」
 少女の顔をじっと見つめながら続ける。

「セキュリティ意識はあるが、顔紋認証にも対応させてるということは利便性を優先している。でもカメラに顔を向けられない状況もあるだろうから押しやすい並びにしてるんじゃないか? 九、八、五……八かもう一度六。八、六……六か。次が八? なるほど」

「ちょ……なんなの」

「メンタリズムの真似事だよ。お前はけっこうわかりやすい。事実に迫ると肩を引く、唾液を嚥下する、目を伏せるといったありがちな仕草が出る。口元が強ばって眉が寄り、下瞼に力が入るのは『恐れ』の微表情だ。あと潜在的に破滅願望でもあるのか、目尻と頬に少しだけ『期待』の感情が出るな。最後は並び的にも九以外ない。九、九、やっぱり八? ほらね。コードは六、六、八、九」

「うそでしょ!?」
 そして諦めが早い、と。三〇パーセントくらいの自信だったが、今の反応で確信できた。

 意外と、まだできるもんだな。
 そんなことを考えながら数値を入力していく。六、六……、

「ほら言えよ。お前は誰で、なんで……」
 カシャリ、と。
 唐突にスマホがシャッター音を鳴らした。

 認証を終えたディスプレイに目を戻すと、斜め下からの僕の顔写真が表示されている。隣に表示されている数列は……位置情報だ。黒いウィンドウにはコマンドラインが流れていく。なんらかのカウントダウンも始まっていた。五十九、五十八、五十七……。

「次のコードは十四桁だよ、お兄さん」
 焦る僕に、少女が不敵な笑みで言う。『恐れ』はない。『喜び』『興奮』の微表情。

「一分以内に入力しないと、お兄さんの顔写真と今日の出来事がサーバーにアップされちゃうよ。そしたら逃亡犯の評価はどうなっちゃうのかな〜?」

 まんまとはめられたらしかった。『期待』はこれか。僕は舌打ちしてディスプレイに目を戻す。
 さすがに十四桁を曲芸で当てるのは無理だ。どうする……?

「わかったならはやくスマホ返してよ」
少女が手を差し出すが、今これを返してしまっては立場が弱くなる。だけどこのままでもまずい。

 カウントは進んでいく。三十二、三十一、三十……。
 どうする? いや……、
 昔の僕なら、どうしてた?

「クレ」
「……は?」
「あたしの名前」

 少女はそう言って、なにかを放り投げた。僕は慌ててそれを掴む。
 手に収まるサイズの、銀色のデバイス。金属製の端子が付いたそれは、子供の頃に見たUSBメモリというメディアに似ていた。

 いや、違う。これは……、
「あたしは、お兄さんにお願いがあって来ました」
「お願い……?」
「うん。そのハードウェアウォレットをハックしてほしいの。そこに入ってる秘密鍵が、どうしても知りたいから」

「……僕、そんなことできないぞ」
「ハッカーの真似をしてほしいわけじゃない」
首を横に振って、クレと名乗った少女が告げる。
「あなたには、あなたのやり方があるでしょ? ソーシャルエンジニアの藤井湊さん」

 
◆         ◆         ◆
 

 - 記事

↓