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Decentralized Kingdom 第1章 16 /著:小鈴危一 /仮想通貨SF小説

   

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Decentralized Kingdom 第1章 16 /著:小鈴危一 /仮想通貨SF小説

 怖気と共に振り向く。ドアが開いており、応接用ソファに一機の警備ドローンが掴まっていた。LEDの無機質な瞳が僕らに向けられている。

 クレがE・gunを取り出そうとしたとき、もう一機の黒い球体がソファの陰から飛び出す。

《カイドウ・タウンセキュリティです。調査へご協力願います。これは市街警備業法第十八条第一項に基づく要請です》

《ご協力いただけない場合、強制執行に伴う身体拘束が許可されています。当該対応によって生じた物損、軽度の身体的損傷は、市街警備業法第十八条の二に基づき免責されます》

《要請します。調査へご協力願います》
《調査へご協力願います》

 応接机の陰、扉の向こうから、次々と警備ドローンが現れる。形が微妙に異なるのは、それぞれ違う兵装を積んでいるからだろう。

「約三十七万一千四百Bitsマイクロビットコインだ」
 冷たい刃のような人声が、室内に響き渡る。

JPY日本円換算にしておよそ一千三百万——なんの金額かわかるか? この騒動での被害額だ。私の時間、実に八十三分という富が無意味に浪費され、消失した」

 ドローンが開け放った扉にもたれかかり、人影が告げる。
「これ以上はとても許容できない。ハードウェアウォレットは今返してもらおうか」

 その姿を見て、僕は思わず硬直した。
 スーツ姿の、長身の女性。四十手前のはずだが、切れ長の目に彫像のような面立ちは年齢を感じさせない。零下の瞳でこちらを見据えるその表情は、メディアで幾度も目にしたことがあった。
 呉槭樹。

「お、お母さん……」
「馬鹿娘が君を頼った時点でここを張ることにしたのは正解だった、藤井湊君」
 女傑が言う。
「まさか一日で入り込まれるとは思わなかったが」
 やばい。

 僕は激しく脈打つ鼓動を抑えるように、周囲を見回す。
 ドローンは五体。部屋の唯一の出入り口は押さえられている。

「大人しくこちらの指示に従ってもらおうか。君たちには現在、窃盗と器物損壊の容疑がかけられている。おっと、不法侵入と不正アクセスの現行犯でもあったな。なるべくドローンの手は借りたくない。事後処理が面倒でね」
 呉槭樹が大仰に告げる。

 僕の身元も知られている。逃げるのはまず無理だ。
 それなら——もうやることは一つしかない。一か八かの賭けになるが。

「ハードウェアウォレットは返せません」
 女傑が眉を顰めた。隣では、クレが驚いたような目でこちらを見ている。

「取引をしましょう。呉さん」
「約五千二百Bits。今までのやり取りですでに七十秒もの時間を浪費した。これ以上私が聞く耳を持つに足る、いったいどんな手札が君にあると?」

「秘密鍵ですよ。ハードウェアウォレットに入っているものです」
 僕は告げる。

「これと、中に収められたコントラクトを公開しないと約束しましょう。その代わり今回の騒動はなかったことにしてください。僕たちはなにもしていないし、なにも知らない……ということです」

「……藤井君、なにを聞かされて協力していたのか知らないが、その秘密鍵はごく個人的なものでね。君が気にかけるようなことではない。わかるだろう?」
 呉槭樹は、見放したような口調で言う。

「そもそも、君はそこに入った秘密鍵を知らない。ハードウェアウォレットを見るのは初めてか? デバイスがあっても中の秘密鍵を知ることは不可能だ。その中には————」

「ワードインデックスが四五六、一四一九、一九九五、一一一七、一四六六、一四八〇、七五三、二四六、二一九、二一〇、三〇〇、四」

 女傑の言葉が止まる。
「これがリカバリーフレーズを索引する数字、でしたね。秘密鍵はわかりますよ。だって——リカバリーフレーズは、この部屋の中に示されているんですから」

 呉槭樹の目線が〇・二秒だけ僕から外れ、室内を泳ぐ。その先は、僕の予想したとおりの場所。

「フレーズは……ぎんいろ、にちようび、りょうり、たてる、ねいろ、ねぶそく、さます、おいしい、えがお、えいえん、おもいで、あおぞら」

 女傑は無言。だが——僕は、思わず笑いそうになる。
 やはり親子だからか、反応がクレとそっくりだ。

「藤井さん、どういうこと?」
 クレが戸惑ったように僕へ訊ねる。
「なんでリカバリーフレーズが……」
「そこのフォトフレームにあるポエムだよ」

 クレの目が、僕の指さすガラスのフォトフレームに向けられる。視線が彫られた文章を追っていく。

『銀色の日曜日。
 ぼくの料理が立てる音色に、寝不足のきみが目を覚ます。
 「美味しい」と笑顔。
 永遠の思い出が、青空に刻まれる』

「これ、お母さんの書斎にもあった……え、でもこれが?」

「わからないか? 銀色、日曜日、料理、立てる、音色、寝不足、覚ます、美味しい、笑顔、永遠、思い出、青空で十二個。ワードインデックスがそれぞれ四五六、一四一九、一九九五、一一一七、一四六六、一四八〇、七五三、二四六、二一九、二一〇、三〇〇、四だ。リカバリーフレーズなんだよ、あれが」

「え、え、待って待って」
 クレが冗談を聞いたかのような顔で言う。

「なに言ってんの? ありえないよ。言ったよね? リカバリーフレーズはランダムに生成された初期乱数から作るんだよ? こんな都合良く有意な文章になんてなるわけないよ」
「なるんじゃない、したんだよ」

 

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